ハンガリー・ブダペストの共同研究者の研究室を訪問してきました。ラボメンバーと一緒にフムスを食べにいったときに、大学院生のひとりが「サルの研究しているならロバート・サポルスキ―を知ってる?私、彼のファンなの。」と質問してきました。
ロバート・M・サポルスキ―はヒヒの集団における行動とストレスレベルの関係を長年研究をしているアメリカの霊長類学者です。アフリカでヒヒの集団を対象におこなっていた研究の思い出を綴った本が表題の『サルなりに思い出す事など』です。軽妙な語り口で次々と繰り出されるおもしろエピソードにニヤニヤしつつ、ときに研究の障壁となる現地の人々との関係や政府の政策などにもどかしさを感じ、ヒヒの生活の厳しさに思いを馳せ、そして怒涛のラストへ…。野生のサルの行動観察にも興味があって霊長類研究の世界に入った私に、この本はわくわくするような世界を垣間見せてくれました。
質問してきた彼女と、この本の話や「表紙がいいよね」などと話が盛り上がったのでした。ちなみに彼女は『人生がときめく片づけの魔法』で知られるこんまり、こと近藤麻理恵にとても影響をうけて、不要な持ち物を処分し、いまはミニマルな暮らしをしているそうです。私もドミニク・ローホーに影響をうけてシンプルライフを心掛けて日々生活をしているので、国境を越えてこのような生活スタイルが文化として広まっていることを嬉しく思いました。彼女は「それは誰?」と尋ねる他の学生に、こんまりの理念について丁寧に説明していました。
ヨーロッパ出張中にはロマと思しき人々を見かけることがありました。帰国後、書店で角悠介『ロマニ・コード』という本に出会いました。ハンガリー、スペインでの自身の実体験があったからこそ、星の数ほどある本のなかからアンテナに引っかかり、手に持ってレジに向かったのだと思います。『ロマニ・コード』はルーマニアの国立大学でロマにロマニ語(ロマの言語)を教えながらロマニ語の研究をしている日本人の言語学者です。この本では、著者がロマニ語を研究するに至った経緯、ロマの歴史と現状、ロマニ語を教えてくれるロマの先生たちとの笑いを堪えられないエピソードの数々が「うるさい文章」(筆者談)で綴られています。
断片的にしか知らなかったロマの文化に触れることができ、そしてなにより、言語にあらわれてくる国を持たない彼ら独特の「世界観」にこれまで築いてきた自分の中心がぐらっと揺らぐような感覚をおぼえたのでした。
