凄い本を読んでしまいました。
“自分を変える凄い本は,たしかにある。読前と読後で,自分が一変してしまうような衝撃や視座をもたらすようなやつ。価値観や生活感だけでなく,ともすると人生そのものにインパクトを与える。見慣れた世界をひっくり返したり,世界の解像度が上がるような「目」を手に入れるという喜びをもたらす。読み始めたら最後,徹夜を覚悟しなければならないような,「夢中本」とも「徹夜本」とも呼ばれる一冊だ。
そんな運命の一冊となる凄い本のことを,「スゴ本」と呼ぶ。そして,(ここ重要)そんな運命の一冊は,じつは何冊でもある。” (Dain著「わたしが知らないスゴ本は、 きっとあなたが読んでいる」の紹介文より)
これはきっと私にとっての「スゴ本」なんだと思います。
先日、ネットでこの書影をちらりとみたときに、表紙の人形に対して自分のなかの何か引っかかり、さっそく取り寄せたのでした。これがまさに著者が感じた「ビビビッ」に似たものだったのだろうと思います。桃太郎神社の鬼の像をみたときのような、ヤン・シュヴァンクマイエルの『ファウスト』の木彫りの悪魔や道化師をみたときのような…。この一瞬の直感を逃さずに、無事にスゴ本に辿りつくことができたのです。
大谷亨さんは2022年に東北大学大学院で博士号(学術)を取得したばかりの中国民俗学の研究者で、本書は、博士学位論文『無常鬼の研究―<精怪>から<神>への軌跡』がベースとなっているようです。
この博士論文のタイトルにもあり、本書の表紙にも登場する「無常」とよばれる中国の神でもあり鬼でもある存在が、どのようにして生み出され、現在に至るかを民俗学的に追ったノンフィクションです。学術論文がもとにはなっていますが、いわゆる専門書ではなく一般向けに書き直され、旅でのできごとや写真とともに自分まで中国の村々をフィールドワークをしているような気分ですらすら読むことができました。その旅のなかで、いろいろな姿かたちの無常にと出会い、人々と出会い、文献をあたり、少しずつ無常の歴史や変遷があきらかになってくる様子は推理小説を読んでいるようでもありました。
次なるスゴ本、スゴ映画にめぐりあうために旅はまだまだ続きます。
