7時間越えの超長編映画として知られるハンガリーのタル・ベーラ監督の1994年公開作『サタンタンゴ』を観ました。降りやまない雨とぐちゃぐちゃの地面、人々は常に貧しく、あらゆることに不満を抱えています。そんなハンガリーの田舎で繰り広げられる人間模様を描きだした作品です。
ふつうの映画ならそろそろ大団円となる時間帯にまだ何も始まりません。でもよくよく考えるとわたしたちの生活も、ストーブの前で佇んだりひたすら歩いたり窓の外の雨をただ見ていたり、そんな時間もあるわけです。次々と何かがはじまって何かが起こって場面がかわって2時間でうまくすべてが収まる。そんな「ふつうの映画」では得ることができない、現実としての人々の人生が長回し撮影によってリアルに鑑賞者に迫ってくるのでした。
Wow, you’re a better Hungarian than me.
これは私が『サタンタンゴ』を観た感想をハンガリーの共同研究者に送ったところ、彼から送られてきたメールのなかの一文です。何度も観ようと思いつつ、未だ鑑賞に至っていないとのことでした。私が黒澤明監督の作品をほとんど観ていないのと同じかもしれません。
タル・ベーラは先月、日本に滞在し福島で映画制作のマスタークラス「FUKUSHIMA with Béla Tarr」や上映会などをはじめさまざまなイベントが開催されました。今月には名古屋で一度は廃業した「シネマテーク」がクラウドファンディングを通じて新たに「ナゴヤキネマ・ノイ」として再出発をしました。そこで2000年公開の「ヴェルクマイスター・ハーモニー」4Kリマスター版が上映される予定だそうです。シネマテークはこのブログにも書いた『チロンヌプカムイ イオマンテ』を観にいった思い出のミニシアターです。名古屋でミニシアターの灯火が消えないようにときどき足を運びたいと思っています。

