「変身」、「審判」や「城」などの作品で有名なフランツ・カフカですが、「流刑地にて」という短編小説も残しています。
流刑地で行なわれる、奇妙な機械を用いての死刑執行。その機械は、「ベッド」「馬鍬」「製図屋」と呼ばれる三つの部分からできている。ベッドに縛りつけられた囚人を、馬鍬に取り付けた針が、製図屋の指図のままに刺し、刻んでゆく…。(白水Uブックス あらすじより)
以前 、「未来のイヴ」に関連してご紹介したミシェル・カルージュの「独身者の機械」では、この「流刑地にて」に登場する機械についても取り上げています。マルセル・デュシャンの作品「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、でさえも」に描かれた機械と関連させ、これらの機械が何を象徴しているのかという側面から興味深い考察をしています。
個人的にはこの短編小説は、「皮膚に刻まれる判決」というところがおもしろいと思っていて、これについては別の機会にふれたいと思っています。
ちなみに、村上春樹の小説「海辺のカフカ」でも主人公の田村カフカと図書館勤務の大島さんが「カフカの短編ではこれが一番すき」と会話する場面があります。わたしも一番好き、というには気が引けるほどのグロテスクさにあふれた作品なのですが、読後にさまざまな思いを巡らせるという点ではまぎれもない名作なのだと思います。
