国分拓『ヤノマミ』はNHKの番組ディレクターである筆者が、アマゾンに住む先住民であるヤノマミ族とともに暮らした150日間の体験をまとめたものです。彼らのことばや食べ物に始まり、出産や死者の弔いに現れた死生観に至るまで、筆者らが集落で過ごすなかで体験したヤノマミの文化が綴られています。
読み終えたのはずいぶん前のことですすが、その後書店で『シャーマン 霊的世界の探究者』が目に飛び込んできて思わず購入してしまったのも、アイヌの祭祀を記録したドキュメンタリー映画「チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ」をミニシアターへ観に行ったのも、この本を読んだことと繋がっているように思います。
そもそも、この『ヤノマミ』を手に取ったのは、私が20年以上前に大学生のときに行ったパラグアイの保護区で出会った先住民たちの姿だったり、かつて山形県鶴岡市にあった、山口吉彦コレクションを展示した「アマゾン資料館」に纏わる思い出が関係しているのかもしれません。さまざまな体験を経て、いまの私がある。
Four Indigenous people killed in ‘clash’ with Venezuelan military over WiFi (The Washington Post 2022/3/21)
違法採鉱で垂れ流される「水銀」がアマゾンの河川を蝕んでいる(クーリエジャポン 2022/8/29)
今年に入ってヤノマミ族にまつわる悲しい報道を目にすることがありました(参考にそのうちの2記事のリンクを上記に貼りました)。私が彼らの存在を知る前からずっとこのようなニュースは流れていたのでしょう。江川紹子は著書『名張毒ブドウ酒殺人事件ー六人目の犠牲者』のなかで、「知ったものの責任」について言及しています。映画化で話題の村上春樹『ドライブ・マイ・カー』にも「知は無知に勝る」というスタンスで生きてきた主人公が登場します。自分にはなにができるのか。記事を読みながら考えていました。
今年5月には国分拓『ノモレ』が文庫化されました。ペルー・アマゾンの先住民のリーダーの視点から未知の先住民との接触を記録した、これも非常に読みごたえのあるノンフィクション作品でした。
