「ひとまねこざる」とレイ夫妻

『ひとまねこざる』は好奇心旺盛なさるのじょーじが主人公の物語です。じょーじは黄色い帽子のおじさんにアフリカから連れてこられて、一緒に住んでいます。そんなじょーじの日常が絵本では綴られています。

夫であるH.A.レイがおもに絵を、妻のマーガレット・レイがおもに文を担当した共著です。絵本『戦争をくぐりぬけたおさるのジョージ 作者レイ夫妻の長い旅』では、残された手紙やノート、写真や知人たちの証言からレイ夫妻の足跡を辿ることができます。ドイツ出身でユダヤ人でもある夫妻は遠いブラジルで結婚します。その後、パリでクラスのですが、ナチス侵攻から逃れるため混乱するパリから自転車で脱出を試みるのです。夫妻がその後長く暮らすことになるアメリカまでの長い長い道のりを知ることができます。

この絵本には、夫妻がブラジルに住んでいるときに2頭のマーモセットをペットとして飼っていた、という話がでてきます。マーモセットは南米に生息する小型のサルです。レイ夫妻がヨーロッパに渡ったときにはこの2頭のペットを一緒に連れて行ったそうです。寒くないようにとセーターを編んで着せていたのですが、イギリスの寒さの中では残念ながら生きのびられなかった、というエピソードが綴られています。

わたしが所属する研究センターでも100頭をこえるコモンマーモセット (Callithrix jacchus) を飼育しています。もともと赤道近くアマゾン川流域に住んでいるサルの仲間ですから、寒いのが苦手です。飼育室は常に暖かくして彼らが快適に過ごせるようにしています。普段はお父さん、お母さん、こどもたち、という家族単位で暮らしており、仲間同士よく鳴き合います。たしかにかわいいですが、一般住宅でペットとして飼うのは決しておすすめしない動物です。

さて、ひとまねこざるシリーズのなかで一番お気に入りなのが『ひとまねこざるびょういんへいく』です。これはボストン小児病院の協力のもとにつくられた絵本だそうです。じょーじがパズルのピースを誤って飲みこんでしまい、病院へいく物語です。小さい頃に祖父母の家にいくと近くの公園にワゴン車の移動図書館がときどき来ていました。ここで何回も借りたことを覚えています。いま手元にある日本語版、英語版は、大学院生時代に退官された教授から譲り受けたものです。当時はまだ小さく、ラボによく連れてこられていた息子にくださったのだと思います。いま霊長類研究に携わっているのも、もしかしたらじょーじがくれた縁なのかもしれませんね。

投稿者: Naho KONOIKE

大学の研究室で脳の研究をしています。このサイトでは、研究活動の紹介とともに日々感じたことなどを綴っています。このサイトのコンテンツは個人の見解であり、所属する機関とは関係ありません。

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