ジョルジョ・モランディ(1890-1964)は卓上の静物と風景を描き続けたことで知られるイタリアの画家です。そのモランディの亡き後、そのままにされていたモランディのアトリエをイタリアの写真家ルイジ・ギッリ(1943ー1992)が撮った作品シリーズがあります。ギッリはこのシリーズ制作中に急逝し、これがギッリの最晩年の作品となりました。
私がこの写真集「Atelier Morandi」をはじめて手にとったのは恵比寿にあったアートブック・インテリアショップのlimArt(現在はPOST)でした。15年以上前でしょうか。私のほかにお客さんもなく厳選されたアートブックが整然と並べられている店内、店内に響く木の床をゆっくりとあるく自分の靴音、そしてその本の写真から感じられる静謐さとどこか張りつめた雰囲気がシンクロして、妙に印象に残っていたのを覚えています。
その後、その写真集のことはすっかり忘れていたのですが、あるとき「自分が住みたい家」のイメージを問われてじっくり考えていたところ、limArtで手に取った写真集のことが突然古い記憶の底からよみがえってきたのでした。あの写真集でみたような部屋に住みたい、と。その本のタイトルもだれの写真集かも覚えていなかったのですが、現代のインターネット情報網は偉大です。すぐに「Atelier Morandi」という写真集につきあたりました。
ギッリの写真集が私の古い記憶からに掘り起こされてから3年ほど経ち、手元においておきたいと、機会があれば探していますが、残念ながらまだ再会できていません。ただ、須賀敦子全集の装丁にはこのモランディのアトリエ写真がつかわれ、いまでもときどき目にすることができるのが嬉しいです。
