「不思議惑星キン・ザ・ザ」は1986年にソビエト連邦にて製作されたSF映画です。以前、レンタルビデオ店でたまたま手に取り、そのジャケットに魅かれて借りてみました。
冬のモスクワ。主人公のひとりが路上ではだしの男を見つけ心配して声をかけます。実はその男は地球に飛ばされた異星人で、彼が持っている装置に触ったことでもうひとりとともに主人公たちはキンザザ星雲にあるプリュク惑星に飛ばされてしまいます。そこの住人たちが話すことばは「クー」(と罵声語である「キュー」)だけ…というストーリーです。この異星人たちのゆるいキャラクターがなんとも言えずかわいく「ク―」のしぐさと相まって、主人公たちとのおかしみのあるやりとりに脱力し、おもわず笑ってしまいます。
しかし、実はこの映画はただのおもしろSF映画ではありません。プリュク惑星には厳しい身分の階級が定められており、ひとびとは理不尽な階級格差に耐えつつ生活をしています。映画が製作された当時のソビエト連邦では出版物に対する厳しい検閲がありました。それをかわすために、別の惑星を舞台としたSFコメディの衣を纏わせて世に出したと考えられています。そのような背景だからこそ、当時のソビエト連邦の人々にも刺さり、カルト的な人気を博したのだろうと思います。
この映画の監督であるゲオルギー・ダネリヤはアニメ版「クー!キン・ザ・ザ」を自ら製作しました。しかし、この作品の完成後の2019年に88歳で逝去し、この作品が遺作となりました。
「クー!キン・ザ・ザ」は今年5月から日本各地の映画館で上映されています。名古屋ではシネマスコーレで上映中です。緊急事態宣言下でもあり、現在は観にいくことができないのがほんとうに残念なのですが、いずれ鑑賞できることをたのしみにしています。

