2、3年前でしょうか。BSプレミアムで放映されていた「ソイレント・グリーン」という映画を、とくに事前の知識がないままに観ました。1973年の公開作品です。
2022年、爆発的な人口増加と環境汚染に見舞われたニューヨーク。合成食品ソイレント・グリーンの製造会社社長が殺された事件を捜査する警官は、背後に食糧危機打開のための政府の陰謀がある事を知る……。(allcinemaより)
ちょうどこの時期、ディストピアな世界を描いた作品にハマっていました。小説では、H.G.ウェルズ「タイム・マシン」、ジョージ・オーウェル「1984年」、レイ・ブラッドベリ「華氏451度」、オルダス・ハックスリー「すばらしい新世界」、伊藤計劃「ハーモニー」、スタニスワフ・レム「泰平ヨンの未来学会議」…、そして映画では「未来世紀ブラジル」などなど…。
幼少期から、常に傍らに本がある生活ではありましたが、SF作品を手に取ることはそれほど多くありませんでした。しかし、数年前に何かのきっかけでディストピアもののSF小説を読んでみたところ、一見 “理想的で平和な近未来”とその背景にある統制社会、そして根底に流れる現実社会への風刺という構造に魅かれてしまいました。その後は、機会をみつけては古典的な作品からひとつずつ触れていっています。
そんな中で観た「ソイレント・グリーン」は、まさにディストピアな近未来を描いた作品でした。人口増加と厳しい格差社会によって、合成食品「ソイレント・グリーン」の配給に頼る貧しいひとびと、高齢者が送られる「公営」の安楽死施設、書籍は入手困難で代わりに知識をもつひとびとが『本』とよばれ、裕福なものたちは高級住宅に『家具』とよばれる美しい女性たちを備え付け…などひとつひとつの設定が印象的です。派手なシーンがあるわけでもなく、全編を通して暗く、怖ろしい話なのですが、観終わったあとも、何かの拍子にふと劇中のシーンが頭を掠める、わたしにとってはとても印象に残る映画でした。
この映画は、1966年アメリカの小説家、ハリイ・ハリスンの「人間がいっぱい(原題 Make Room! Make Room!)」を原作としてつくられました。ちなみに、2006年に日本で舞台化されたときは、映画で主人公が最後に叫ぶ「真実を暴くセリフ」がそのまま公演タイトルになっているそうです。それってネタバレしていますよね…?

