8月に東京都写真美術館で開催していた「総合開館30周年記念 ルイジ・ギッリ 終わらない風景」展を観てきました。ルイジ・ギッリ(1943-1992)はイタリアの写真家であり、今回がアジア初の個展だそうです。
ルイジ・ギッリについては以前このブログで触れましたが、画家のジョルジュ・モランディのアトリエを撮影したりシリーズがとても好きです。写真集を手にすることがもう叶わなくなったいま、今回の個展でこれら作品のうち数点を間近で見ることができたのがなによりの収穫でした。図録にも載っているので、自分の手元にこれらの写真が形として残るのが本当に嬉しく思います。
展示されていた全作品を通して「ルイジ・ギッリの写真はやはりいいなあ」と改めて思ったのです。自分が目で見てこれは素晴らしい、と思った3次元に存在する瞬間を2次元の写真に収めようとしても、その魅力は2割ほどしかそこには残っていなくて、その絵はもうどこにも存在しないわけです。(静止画さえ太陽光の差し方は刻々と変わっていくわけで。)それを、彼は専門知識と技術、そして思考によって物理的に制限された写真という枠組みのなかに、それらすべてを包括して表現しているように見えます。それが見るものに被写体の来歴に想いを馳せさせたり、鑑賞者自身の脳の深い場所にしまってある記憶を呼び起こしたりする力を持っている。だからこそ、いいと思うのだなと感じました。
その撮影技術だけでなく彼の写真への哲学を言語化したのが大学での講義をまとめた『ルイジ・ギッリ写真講義』(みすず書房、2014年)です。展覧会の図録の冒頭に掲載されている写真家のホンマタカシさんによるこの本にちなんだ寄稿も非常に印象的で、これも展覧会のもうひとつの収穫でした。

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