クリスマスシーズンになり、ラジオからはバレエ音楽「くるみ割り人形」が流れてくるようになりました。
いまではクラッシックバレエのクリスマス公演での定番となっている「くるみ割り人形」は、E. T. A. ホフマンの童話「くるみ割り人形とねずみの王様」を原作としてつくられた作品です。作曲はチャイコフスキーが手がけました(作品番号71)。
バレエの舞台のものがたりはクリスマス・イブの夜、少女クララが自宅で開かれたパーティに参加していた老人からくるみ割り人形をプレゼントされることから始まります。パーティが終わり、深夜12時を打つ時計の合図でクララは人形と同じ大きさになります。その後いろいろな出来事に遭遇しつつ、王子さまに変身した人形とともにお菓子の国へ…という夢いっぱいのキラキラしたストーリーです。
しかし、意外なことにホフマンの原作はかなり違った趣の作品です。入れ子構造になっているいくつものものがたり、複雑に張り巡らされている伏線、ダークな側面など、一般的な「くるみ割り人形」のイメージとは異なるものです。
私がもっているホフマン「くるみわり人形」の本はモーリス・センダックのイラストです。絵本「かいぶつたちのいるところ」で有名なセンダックは1983年初演のパシフィック・ノースウエスト・バレエ団の公演で舞台ステージと衣装のデザインを手がけました。ホフマン原作の作品の意図をくみ取り、グロテスクな要素も加えてつくりだされた新たなくるみ割り人形の世界観は、いまの舞台にも大きな影響を与えています。
