先日、ストップ・モーション長編アニメの『JUNK HEAD』を観ました。
“奇才・堀貴秀がたった一人で独学で作り始め7年かけ完成させた奇跡のSFストップモーションアニメ。環境破壊やウィルス感染による遺伝子崩壊で滅亡に向かう地下世界を舞台に人類存続をかけたJUNK HEAD の奇妙で未知なる壮大な冒険が始まる” (JUNK HEAD公式サイトより)
まずは、この映画をつくりあげた情熱とその莫大な作業量に思いを馳せてしまいました。かなり前になりますが、イギリスのストップ・モーションアニメ『ひつじとショーン』の制作ドキュメンタリ番組を観たことがあります。ひとコマひとコマ少しずつ粘土でつくった登場人物や背景を撮影する気の遠くなるような作業を延々をしていて印象的でした。ただ、こちらはいくつものスタジオで並行して大人数で撮影をしていました。それに比べると映画『JUNK HEAD』の圧倒的人数の少なさ!登場人物たちの声も堀貴秀さんがほとんどひとりでやられたのです。
そんな制作の裏側だけでなく作品としても、わたしとしてはグッとくるところがいくつもありました。
ひとつは登場する生命体やそのボティの造形です。主人公が地下世界で初めてつくってもらったボディをはじめ、地下生命体はグロテスクなのにどこか可愛さがあったり、記憶に残るキャラクターたちが多くいました。造形だけでなくキャラクターもいいのですよね。あと、地下のスチームパンク的な世界観が恰好いいです。幼いころ、よるの中央道を走る車の窓からながめた安中の工場地帯を思い出しました。
あと、音楽もカッコいいです。劇伴は作曲家の近藤芳樹さんが手がけているそうです。登場人物たちがあやつる複数の異世界言語もときどきツボなリズムがあってそこが笑いを産み出していました。
最後に印象に残った点。地上では人間は不老不死の世界なのですが、主人公が地下世界で普通なら死ぬようなひどい目に遭いまくるわけですね。いろいろあったあとにポツリと「上にいるときより今のほうが生きているって感じがするんだよね」というようなことを言います。このセリフは、ちょうど映画を観終えたあとに読み始めた國分功一郎『暇と退屈の倫理学』のテーマに通じるところがあって、(映画ではあまり描かれていない)不老不死の人間たちの地上での暮らしにも思いを馳せつつ読み進めています。
『JUNK HEAD』は続編も予定されているそうです。制作援助のためにささやかながらYAMIKENストアでお買い物をしてみました。
