「ゼロの未来」と「未来世紀ブラジル」

2013年に製作されたテリー・ギリアム監督のSF映画『ゼロの未来』を観ました。荒廃した都市とネットワークによる監視社会、サイケデリックで風変わりな登場人物、とテリー・ギリアム・ワールド全開な作品でした。

近未来世界。世間になじめない天才コンピューター技師コーエン(ヴァルツ)は、謎の定理を解明する義務を任される。荒廃した教会に一人で住み、定理の解明と人生の目的を知る為、ある電話を待ち続ける。(Filmarksより)

仕事で追いつめられる中高年の男性主人公が若い奔放な女性と出会うことにより人生が変わっていく、という構造は1985年公開のテリー・ギリアム監督の映画『未来世紀ブラジル』と同じです。ただ、監督はインタビューで、「ゼロの未来は未来世紀ブラジルと比べられたくないから、ユートピア的なイメージを多用した」というようなことを述べていました。とはいっても主人公の住む焼けた教会のなかにはテレワークを監視する赤外線カメラが何台も取り付けられ(ひとつはキリストの頭部として!)、街中は荒れ、充分にディストピア感は出ていました。

『未来世紀ブラジル』では街を覆うダクトが印象的で、ロバート・デ・ニーロがコミカルなダクト修理屋役としても登場しました。このダクトっぽい何かがやはり『ゼロの未来』でも登場します。以前、仔のブログで紹介したことがある長編クレイアニメーション『JUNK HEAD』の背景もスチームパンク的な管が張り巡らされ、めちゃくちゃかっこよかったです。壁を伝うたくさんの配線や配管って魅力的ですよね…

1977年にテリー・ギリアムが製作した映画『ジャバーウォッキー』は、名古屋のミニシアターで今年の夏にリバイバル上映されていました。上映はたった7日間のみだったので、うまく予定を合わせて観に行くことができませんでした。とても残念…。Jabberwockは、ルイス・キャロルの小説『鏡の中のアリス』に登場する本に書かれた詩のなかに登場する生き物です。私の手元にある新潮文庫の矢川澄子・訳では邪婆有尾鬼(ジャバウオッキ)と当て字がされています。ほかにも訳者によって様々な漢字表記のバージョンがあるようです。この生き物について多くは語られず、その謎めいた存在ゆえ、後世のクリエイターたちを魅了しつづけ、その後のたくさんの作品に登場することになるのですね。

(公式ポスター

投稿者: Naho KONOIKE

大学の研究室で脳の研究をしています。このサイトでは、研究活動の紹介とともに日々感じたことなどを綴っています。このサイトのコンテンツは個人の見解であり、所属する機関とは関係ありません。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中