ロバート・コルカ―「統合失調症の一家: 遺伝か、環境か」

先月、(少なくとも私の周囲では)話題沸騰中の「統合失調症の一族」を読了しました。
12人のこどものうち6人が統合失調症を発症したアメリカのとある大家族の軌跡を追うノンフィクション作品です。両親の馴れ初めから、家庭環境、発症の経緯やその後などを多くに資料から掘り起こした貴重な記録でした。兄弟がひとりひとりと奇妙な行動をしはじめるさまは、本人と周囲の苦悩がひしひしと伝わってくるだけでなく、そして発症していない兄弟姉妹の「私はつぎかもしれない」という恐怖も感じされてくれました。

本書では、また、統合失調症の研究の歴史についてこの家族が果たした役割にも触れられています。統合失調症のメカニズムの一端を研究している同じ研究者として、同書に登場する医師、研究者たちの研究の上に、現在の統合失調症研究が成り立っていることを改めて感じました。

それぞれの兄弟が、異なる疾患と診断されたり、診断名が時間を経て変わっていく記述も興味深いものでした。ある兄弟は統合失調症、別の兄弟は強迫性神経障害、そしてあるときは躁うつ病(双極性障害)などなど…。同じ遺伝子情報を持ちながら、異なるストレス要因によって出現する症状もさまざまであること、診察時に示す症状によって診断名が異なること、など「統合失調症とは本質的にどういう疾患であるか?」という大事なことを改めて考えるきっかけを教えてくれる本でした。

この重厚な物語の最後に描かれていた、次世代へと繋がれたバトン。本書でも重要な役割を果たす家族の末妹の壮絶な人生と重なり、熱いものがこみあげてくるのを感じつつ、読み終えたのでした。

投稿者: Naho KONOIKE

大学の研究室で脳の研究をしています。このサイトでは、研究活動の紹介とともに日々感じたことなどを綴っています。このサイトのコンテンツは個人の見解であり、所属する機関とは関係ありません。

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