「エコール」と「エヴォリューション」

映画「エコール」と「エヴォリューション」が同じ監督の作品と知らずに立て続けに観ました。これも何かの縁かと思い、文として記録に残したいと思います。

ルシール・アザリロヴィック(1961-)はフランスの映画監督です。「カルネ」で有名なアルゼンチンの映画監督ギャスパー・ノエとは公私ともにパートナーだそうで、彼女自身も編集・制作に関わっているようです。知らなかった…。「カルネ」は雑誌ダ・ヴィンチの初期の特集号に掲載されていた紹介文が強烈で、高校生だった自身の記憶に残っている映画です。でも、その印象が強すぎて、怖くて映画はまだ観ることができていません。

「エコール」は2004年制作の映画で、森の奥にある寄宿学校で少女たちが暮らす話です。なにかが起きそうで危うい彼女たちの日常が美しい映像で描かれます。ちなみに、原題は無垢を意味する「イノセンス」でしたが、押井守監督の映画と混同を避けるために、学校を意味する「エコール」に改題されたそうです。

一方、「エヴォリューション」は島に住む少年が主人公です。母親から謎の液体や緑色の得体のしれないものを食事として与えられたり、病院で謎の検査をされたり、冒頭から嫌な予感しかしません。来日時の監督のインタビューでは、幼少期に盲腸の手術をしたこと、見知らぬ大人に自分の身体をいじられた(=開腹手術された)体験がものすごく記憶に焼き付いた、というようなことを述べています。このような体験を通じたこどもの気持ちの揺れ動きのようなものが作品にうまく反映されているように思いました。

谷川俊太郎・作、長野重一・写真の「よるのびょういん」も、こどもの目線から病院を表現した作品です。ゆたかくんが高熱と腹痛でよるのびょういんへ搬送され、手術をするお話です。一連のできごとがスピード感のある写真で表現されていて、そこで夜な夜な働く人たちの仕事が紹介されている、こどもの頃から大好きな絵本のひとつです。でも、小さかったうちのこどもたちに夜寝る前に読んであげようとすると、「この本怖くていや~」と断られるのがお決まりでした。無影灯を手術台から見上げるアングルはたしかに自分が手術されるようでドキドキしますね。

2つの映画は主人公の性別は違いますし、エヴォリューションはややファンタジー色の強いストーリーですが、閉ざされた空間で生活を余儀なくされる少年少女の身体と心の成長と、息苦しさ、そして不安が美しい自然とともに共通して描かれているように思いました。

投稿者: Naho KONOIKE

大学の研究室で脳の研究をしています。このサイトでは、研究活動の紹介とともに日々感じたことなどを綴っています。このサイトのコンテンツは個人の見解であり、所属する機関とは関係ありません。

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