ソール・ライターのような写真家は珍しい。ファッション写真の分野で成功をおさめながら、1980年代以降、色彩とフォルムの純粋な美しさを捉えることを希求する「自分の写真」を撮ることだけに専念していく。彼の写真の被写体は、彼の自宅から歩いて行ける範囲の見慣れた日常の光景だ。斜め後ろから、そっと、愛おしむように掠めとられたニューヨークのストリート・シーン。そこにスナップすることの歓びが溢れ出している。 飯沢耕太郎(写真評論家)「展覧会へのメッセージ」より
一年ほど前に、映画「写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと」(原題:In No Great Hurry: 13 Lessons in Life with Saul Leiter)を観ました。
晩年のソール・ライターに密着し、彼の半生を辿る長編ドキュメンタリー映画です。本人のインタビューとともに、彼がカメラを手に自宅周辺を散歩する様子や、自宅で猫と戯れながら写真を整理する姿が淡々と描かれています。
これまでのスナップ写真たちがどのように生みだされてきたのか、このドキュメンタリーを通して伺い知ることができたように思いました。猫と思い出の作品ともに暮らす静かな生活。”In no great hurry”ということばも心を打つのでした。
回顧展は2017年にBunkamuraから始まり、現在は美術館「えき」KYOTOで3/28まで開かれています。映画も3/5-3/11までの短い期間ですが、京都シネマで上映されています。
