ポーランドの小説家スタニスワフ・レムについては映画「惑星ソラリス」とその原作の「ソラリス」についてこのブログでも触れたことがあります。レムは「泰平ヨン」という主人公がさまざまなところに行くSF小説シリーズも執筆しています。
そのシリーズの中の「泰平ヨンの未来学会議」では、泰平ヨンが出席した世界未来学会議でテロに巻き込まれ、未来世界を彷徨うことになるのです。
この作品は監督は『戦場でワルツを』のアリ・フォルマン監督により2013年にフランス・イスラエル合作の『The Congress(コングレス未来学会議)』として映画化されました。といっても、この映画の主人公は泰平ヨンではなく女優のロビン・ライトで、本人役で出演しています。ストーリーもハリウッド版未来学のような、原作からはかなり改変されたものになっています。この映画は実写パートとアニメーションパートがあるのですが、その使い分けが綿密に練られていて、それが映画と原作に共通するコンセプトを紡ぎだしています。この実写・アニメの融合によりこれまでにない映画体験をしたのが印象に残っています。
実は、わたしは先に映画を観ました。レムの原作と知ってあとから「泰平ヨンの未来学会議」を手に取ったのです。でも、映画の体験が強烈すぎて原作を読んでいると映画のシーンが割り込んできてしまい、文章を追いながら自分自身による視覚化をおこなう“読書体験”に入り込めませんでした。なにも知らない状態で原作を先にたのしみたかったなと思っています。

